2011年12月6日火曜日

頂点に立つインテルの王者の戦略

前回の投稿にて、パソコン市場の勝者はインテルである、という結論を提示しました。

この状況は、各社の利益率を比較してみると納得できます。
インテルの2010年度の粗利率は66%でした。その一方パソコンメーカーでは、一番収益率の良いDELLですら18.5%です。

また、 立本博文氏のレポート『PCのバス・アーキテクチャの変遷と競争順位 ーなぜIntelは、プラットフォーム・リーダシップを獲得できたかー』のPC・部品の平均価格変化率の表(P.44)を見ると、パソコン本体の激しい値下がり傾向と比べてCPUの単価の下降はゆるやかであり、インテルがパソコンメーカーよりも有利な状況にあることが見て取れます。
一体なぜ、インテルはパソコンメーカーに対して優位でいられるのでしょうか?

立本博文氏のレポート『PCのバス・アーキテクチャ〜』や、小川紘一氏の『我が国エレクトロニクス産業にみるプラットフォームの形成メカニズム アーキテクチャ・ベースのプラットフォーム形成によるエレクトロニクス産業の再興に向けて』はインテルの戦略を詳細に解説しているので、簡単にまとめます。


イ ンテルは、CPUとそれに組み合わせるチップセットを販売しています。チップセットはSATA、PCI Express、USBなどの標準インターフェイスを持ちます。インテルが標準化を行ってきたこれらのインターフェイスにより、サードパーティーメーカー は自由に周辺LSIや、周辺機器を開発できるようになりました。また、高度なテクノロジーを2個のチップ内部に集約したことで、各パソコンメーカーは高度 な技術を必要とせず、マザーボードを容易に開発できるようになりました。

一方、チップセットとCPUの間のインターフェイスは基本的に公開していないため、他社がインテルチップセットに対応したCPUを開発することや、インテルCPUに対応したチップセットを開発することは不可能です。

外 部とのインターフェイスは標準化してサードパーティーの参入を促し、自社LSIの価値をたかめる(オープンプラットフォーム)。 一方、CPUとチップセットを切り離し不可能な組み合わせにして、その内部をブラックボックス化して互換品の開発を不可能にする(クローズドプラット フォーム)。
このように、クローズドプラットフォームとオープンプラットフォームを使い分けることで、自社CPUとチップセットの絶対的地位を築いてきたのです。

インテルの標準化の取り組みや、パソコン開発に高度な技術力を不要にした取り組みは、業界に新規参入者を増やして市場を活性化させた一方で、競争激化を招き、各メーカーの収益を圧迫する構図となりました。
また、各パソコンメーカーはインテルのロードマップに従ってパソコンを開発するので、機能が横並びとなり、差別化は困難です。


インテルはパソコン市場の王者として君臨してきたわけですが、いつまでも王者の戦略をとれるとは限りません。タブレットという新カテゴリーのデバイスがパソコン市場を侵食して成長しており、そのほとんどはインテルCPUの代わりにARMコアCPUを搭載しています。インテルも敗者の戦略をとる日は近いかもしれません。

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